感想/COMITIA123/懐中天幕(つむぎゆう)/ごご の らくえん ─或いは、由ヶ先中学校生徒会余話─
ざっくりと感想
単純に属性でまとめれば、 百合
だとか 中学生(女子)
だとか、 芯の強いおっとりさん×張り詰めてこっそり内面が繊細なツンデレ
だとか、そう言うものの見方になるのですが、作品が示しているものとしては、プロローグの根源的な場所からの問いかけ、漠然としたテーマが、話の終わりに向かって少しずつ滲み出てくるような「そもそも人を好きになることって……?」という透明な掴みづらいお題に対するひとつの形、答えなのだな、と思いました*1。
想いの正体やその捉え方、みたいなレイヤーまで落ちて色々考えていくと、作品について単純な属性で語るのが逆にもったいなくなってくる感覚を持ちました。
(本業というか、その創作の道の人に対して当たり前すぎる感想*2で大変恐縮なのですが)プロローグが終わったあとの、本編が開幕してから始まる情景描写から話の掴みまで、非常にテンポ良く楽しく、そこから一気に惹き込まれて読みました。
完全に読み手側の勝手な妄想なのですが、プロローグで指し示される 彼女 、 少女 というのが、作中のメインのふたり*3のどちらでもあるような流れがその後ろにあったら良いなと思いました……つまり、この話の構成としては片側にフォーカスが当たっている*4のですが、次は逆サイド*5からの視点に寄っていって、そちらの内面から再度プロローグの問いが重なってくるような……逆から見た世界も見ることができたら楽しそうだな、みたいな期待というか、広がり、余白を感じました。
後書きで言及されているとおり、筋としては山や落ちが存在しない、なだらかな進行ではありましたが、すべてを通して浮き出てくる雰囲気はしっかりと柔らかくあたたかいものであったと思います。