感想/COMITIA123/餅屋。(餡子)/年の差アンソロジー『たとえばこんな恋のはなし』
全体を通しての感想
別に男性向け or 女性向けという箱の中にあるものではないと思う*1のですが、読みながら「あー、この設定普通に色々味付け変えたら普通に男性向け的な見せ方十分できるなぁ、というか、このあたりって本当にどのようなガワを用意するかで全部決まっちゃうんだなぁ」とか感じてました。
あと、比較的短くまとめる必要がある関係上、どの作品も序盤の引きが効果的であったと思います。自動的に密度が濃くなるので、すっと設定が入り込んできて、続きが気になるのでどんどん読んでみようという気持ちになっていく。そのあたりの基本的な作法という力というか……しっかりとした能力を感じました。
以下、収録順番に作品ごとの感想。
コインランドリーから始まる恋もある
話の入りの流れがとても良かった。やっぱ引っ張ってくれるお姉さん役って偉大だなーとか思ったり*2。すべてを分かってくれた上でキューピッド役めいた立ち振る舞いをしてくれる存在ってすごいなーというか……これは、おじさまを愛でたいという立場よりも、応援したい立場で読んでるからかも知れない。
『触れられたくないこと』というキーワードの提示から消化までが早く、後半からラストの甘い成分の為の場所はしっかり確保されていて、このあたりに勝手に書き手の想いを見た。舞台とかシチュエーションがしっかり乙女してる。
貴方とコーヒー
(※なんかもっと他にも作中キャラが動いていた舞台があったようですが*3、そこまで追いかけきれなかったのでそのあたりはおいとく)
前半と後半の対比が鮮やかで、その前後どちらのパートについても、登場人物のやりとりが面白く、いわゆる一粒で二度おいしい状態になっているのが好き。ストーリー密度が短くて濃い。
コーヒー経由のメッセージングというか、こっそりと惚気を突っ込まれるシチュエーションって楽しいので色々考えてしまうと思う*4ので、そう言う遊びがオチの方に差し込まれてるのが良かった。
あなたに花束を
読んでる間、ずーっと
うわー、これメイドさんじゃん!!!
という邪念*5の支配下にあった。つまりメイドさん視点の創作ですよね……!
ええと、アンソロジーの中でこのふたり(おっさん×女の子)が一番可愛いなーと思いました。いや、旦那様×使用人シチュだからとかそういうのではなくて、それぞれの、自分の想いというか、距離感を壊さずにしなければと考えての所作であったり、あるいは、でももっと距離を縮めたいという感情の発露であったり、その流れやシチュエーションが一番私好みだったのだと思う。
でもやっぱり、読み手にとってのわかりやすさ*6補正というのはかなりあるのかもなぁ、とかも思いました。
あと、場面がほとんど屋敷の中だったというのも、想像力に優しかった*7。
雪山エデュケーション ~おじさんとケースオフィサーさん~
設定が完全に不意打ちでした。まさかミリタリーめいたバトルが入ってくるとは……。そのお陰でこれもすごく印象に残る残る。
また、途中からずーっと
合法ロリか!! 見た目が男の子っぽい奴か!!!!
という邪念*8が以下略
数カ所、ストーリーにおいて命のやりとりが差し込まれているはずなのですが、さっくりと書かれているのでそんなに重くなかったのが個人的に助かった。
恋の話としては、微妙に入り口過ぎるというか、前説過ぎる場所である感じがして、オチ(裏の目的)の種明かしを経た後、もっとどうなっていくのかなーというのがとても気になる強力な余韻になった。
そうか、この場合、おじさんのほうじゃなくて女の子の方にギャップ萌えみたいなのを感じてしまったからか……!
奇跡は神様の言うとおり
真夏の持つ糞暑い透明感と、回想における、漠然としたやりとりからしみ出してくる雰囲気がとても良かった。うまく言語化できないんですが、回想、真夏、(少年少女の)居場所探し、(何かを背負った大人の)居場所探し、みたいなシチュエーション、から、色々な連想というか、妄想をかき立てる。
全作品の中で、この設定が一番、現実的というか、体験からの連想が一番しやすいはずなのに、読後の浮遊感というか、ファンタジーめいた後味はこれが一番強い。
舞台が身近に感じられる分、所々にある余白の埋め方、そこから想起されるものは読み手の数だけ、色々なバリエーションへと広がりそう。
イラスト挿絵とか色々と雑多なアレの感想
- 選んだポストカードは
奇跡は神様の言うとおり
のでした。 - イラストで見る一番好きなカップル絵は
雪山(略)
- 読後感で考えた一番好きなカップルは
奇跡は神様の言うとおり
- 完全に女の子の若さにやられている気がした*9。
以上、普段慣れないジャンルに飛び込んだ感想でした。
感想/COMITIA123/水を得たキャベツ
感想/COMITIA123/悠々閑々(司馬 舞)
うちのかわい子ちゃん
一番びっくりしたのは、コミティアのサークル参加って子連れスペースというシステムが存在するんだ、ということ……知らなかった……。
抱っこしても寝ずに嫌がっている描写で、子供の背中が反ってるようになってるのに対して、ものすごく色々な事を思い出してしまったくらいには、没入して読んでいました。
自分の観測範囲の問題だと思うけど、無痛分娩を描いたエッセイというかレポートというか体験記の漫画を初めて見た。人類や医学の進歩があるのだから、お産に伴う痛みというのは極力なくなってしまえば良いのにと思うのだけど、事情を知らずに印象で脊椎注射とか、痛覚はないけど引っ張られている感覚だけ残ってるとか、そう言う描写を読むと勝手な妄想をしてゾクッとしてしまう。産んだことないけど*1。
子供を持つようになってから、親馬鹿というか、子供を可愛く思えるようになった、みたいな変化について描かれているけど、私がコミティアで育児系の体験ベース創作を色々探して見てみたというのも、漠然とその流れなのでは、とか思ったりした。つまり、この系の創作って体験した人ほど強く共感できる、ある種、未体験者の想像を絶する分野なので、中に載ってるお役立ち情報*2について、本当にそれが必要になりそうな人にはなかなか届かないんだろうなぁ、みたいなさみしいことまで勝手に考えたりしてた。
固有の感想というか強く同意したりしたアレ
新生児~乳児から出てくるあれやこれやについて
排泄物に限らず、よだれについてもしばらくの期間無臭*3なので、本当に良くできてると思う。というか、相対的に、いかに大人の身体が色々と年季が入った状態になってるのか、というのを痛感させられる。
泣き出したらお母さんじゃないとダメだと思う事
四六時中見てるわけじゃないから、というのはもちろんあると思うけど、男親から見てると、泣き出されたときの選択肢としておっぱいを吸わせるというオプションがとても強力に見えるので、本当にお母さんじゃないとダメだと強く思ってしまうことはある*4。
子供本人から聞いたわけではない*5のだけど、お母さんじゃないとダメだわーって特に思うのは、お父さんと子供と二人きりだったら何の問題もなかったのに、お母さんの姿を見た途端に*6あっちがいいと泣かれたり騒がれたりされたときですかね。
とにかく、しばらく泣き止まそうと縦に横に抱っこして、立ち上がり、ひたすら柔らかく揺らしても収まらず、なのにお母さんに渡した途端に静かになった経験が少なくないので、その無力感から「お母さんじゃないとダメだ……」と言いたくなるわけです*7。
にしても、なんか感想と言うより、普通におっさんの戯れ言めいた主張になってしまった……。
感想/COMITIA123/かまぼこ部屋(あいざわさち)
TOW-ROW
蟷螂。カマキリと女の子が一緒に描かれているだけでこんなにかわいくなるとは。ハリガネムシも合わせてしれっと描いているのが本当にすごい。
顔だけじゃなくて身体全体で表現を構成するというのを人間とカマキリと併せてやってるのに愛を感じる。
表紙にもなってるオオカマキリと女の子(いのりちゃん)の構図が一番好き。
CHODINATE
蝶と蛾と、さらに幼虫と成虫と女の子をいっぺんにまとめてあるのに、違和感なく可愛い。蛾の成虫や、あるいはすべての幼虫はポケモンめいたデフォルメをしないとなかなか可愛くならないと思うのだけど、そのまま違和感なく重ねているのはやっぱり愛を感じ(略)
えろいおっさんなので、ふっくらしてるデザインになってる蛾が好き。
感想/COMITIA123/飛燕想(あとのまつり)
単に妹とちっちゃい子が好きだったので入手。
表紙と内表紙(というか、本文中の1ページ目の絵)で表情がこっそりちがってるのがとてもかわいくて好き。
おとなしい義妹(ロリ)が、こっそりと、ものっそい性的なことに積極的な性格だとか、ひとりでしてる所を見ちゃうとか、勝手に発情しっぱなしでひとりでしちゃってるとか、現実的に考えると面倒で細かいあれやこれやを全部すっ飛ばして、全体的に超ストレート直球全開な薄い本になっていて、キャラの性格からシチュエーションから内容から、すべてが非常に良かった。